装置を直す側から、つくる側へ。図面を完成形として見るのではなく、その先で装置がどう動くのかを考えるようになるまで。
装置を直す側から、
つくる側へ
前職は食品包装機のメーカーです。出荷前の検査と、メンテナンスの補助を三年ほど。動かなくなった箇所を探して、部品を替えて、また動く状態に戻す。手を動かす仕事なので、性格には合っていたと思います。
ただ、直しているうちに引っかかることが増えてきて。この機構は、なぜこの形なんだろう、と。もっと簡単にできそうなのに、あえてこうしている理由があるはずなんです。それを知っているのは設計した人で、自分は結果だけを触っている。だんだん物足りなくなりました。
青澄を知ったのは、自社のラインに入っていた検査装置がきっかけです。他社製でしたけど、カメラと照明で不良を見つける仕組みが面白くて。調整に来たメーカーの人の作業を、ずっと横で見ていました。ああいうものを、つくる側に回りたいなと。
面接のあと、工場を見せてもらいました。組立途中の装置を囲んで、設計の人と製造の人が普通に話している。あの距離感が意外でしたね。「一台ごとに違うので、覚えることは多いですよ」と正直に言われたのも、かえって信用できました。楽ですよと言われていたら、たぶん入っていません。
同じ装置は、
二度と来ない
組立フロアでは、常に三台か四台が同時に進んでいます。隣の台と自分の台で、大きさも構造もまるで違う。手のひらに乗る部品を検査する小さい装置の隣で、背丈くらいある搬送機付きが組まれていたりします。
自分の担当は、アルミフレームの組み上げから、搬送機構の取り付け、カメラと照明の設置、配線、試運転まで。装置が形になる工程を、ひととおり通ります。前職は決まった型番の機械でした。最初は感覚が全然違いましたね。型番がない。図面が毎回新しい。
正直、半年くらいは不安でした。覚えたことが、次では使えないんじゃないかと。でも、そうじゃなかった。カメラの取り付けで気をつける点とか、配線を通す順番の考え方は、装置が変わっても効いてきます。覚え直しじゃなくて積み上がっているな、と思えたのは三台目くらいからです。
図面どおりなのに、
画像が安定しない
いちばん覚えているのは、三か月目の失敗です。カメラを固定するブラケットを組みました。寸法は図面どおり。確認もしました。なのに、搬送機を動かすと画像がわずかにぶれて、検出が安定しないんです。
原因は、締める順番と、フレームの合わせ面の当たり方でした。端から順に締めたせいで、ブラケットがほんのわずかに傾いていた。数字にすれば十分の一ミリです。止めて見れば、どこも間違っていない。動かして初めて出てくるずれでした。
そのとき、組立を教わっていた浅野さんに言われたんです。「この部品の役割は、付けることじゃなく、同じ画像を撮り続けることだよ」と。自分は、取り付けを終わらせることが仕事だと思っていました。でも目的はその先にある。叱られたというより、視点をずらしてもらった感じでしたね。
それから、組む前に前後の工程を必ず確認するようになりました。この部品は何のために付いていて、動いたときどこに力がかかるのか。図面には書いていないので、分からなければ聞きに行きます。手が止まる時間は増えました。でも後戻りは確実に減りました。

製造から設計へ、
言えることもある
図面で気になる点があれば、設計のところへ直接聞きに行きます。同じフロアなので、歩いて三十秒くらい。とはいえ最初は迷いました。経験の浅い自分が言っていいのかな、と。
ただ、この順番だと工具が入らないとか、保守のときにカバーが外しにくいとかは、組んでいる側にしか見えません。図面の上では成立していても、手が入らない場所はあるんです。黙って無理やり組むこともできます。でも、その装置は何年も顧客の工場で動く。次に困るのは保守で入る人です。
一度、センサーの位置を数センチ変えられないかと提案しました。設計の宮原さんは、その場で3Dモデルを開いてくれて。それから「なぜそこに付けたいのか」を聞かれました。工具が入らないから、では足りない。どの工程で、どの角度から手を入れるのかまで説明する必要がありました。
理由をちゃんと言葉にできれば、聞いてもらえます。逆に、言葉にできないうちは自分でも整理できていない。あのやり取りで学んだのはそこですね。提案は次の図面に入って、今もその位置で動いています。
初めて、
顧客の工場へ
行った日
一年目の冬、据付に同行させてもらいました。神奈川の電子部品メーカーです。自分が組んだ装置が、ラインに入る日でした。社内では何度も問題なく動いていたので、設置して電源を入れれば終わりだと思っていました。
実際は、判定が揺れました。同じ設定で、同じ製品なのに、結果が変わる。探していくと、原因は二つありました。隣の工程の照明が、時間帯によって装置の中に回り込んでいたこと。それと、通路をフォークリフトが通るたびに床がわずかに振れていたことです。
遮光板を追加して、架台のアンカーを打ち直しました。制御設計の佐伯さんと二人がかりで、二日かかりました。図面にも仕様書にも、隣のランプやフォークリフトのことは書いてありません。
装置って、単体で完成するものじゃないんですね。工場という場所の一部になって、初めて動く。あのとき体で分かりました。社内の試運転はゴールじゃなくて、途中経過です。それ以来、組んでいる最中も「これは現場でどうなるかな」と考えるようになりました。
完成より、納品後の
連絡がうれしい
組み上がって初めて通しで動いた瞬間は、もちろん達成感があります。でも、いちばんほっとするのは、納品してしばらく経ってから「問題なく動いています」と聞いたときですね。
顧客の工場は、温度も光も、流れてくる製品の状態も少しずつ違います。そこで一日、一週間、一か月と動き続けて、やっと完成だと思っています。出荷した時点では、まだ何も分かっていない。
次に任せてもらいたいのは、装置全体の調整です。今は組立が中心ですけど、カメラと照明の条件を出すところまで自分で見られるようになりたい。そこができると、現場で一人で判断できる幅が広がります。
もう少し先だと、後から入ってくる人に「なぜこの順番で組むのか」まで説明できる人になりたいです。自分は浅野さんのあの一言で変わりました。同じことを、次の人に返せたらいいなと思っています。
ある一日の流れ
| 08:30 | 出社。朝礼で各台の進み具合を共有し、その日に進める工程を確認する。 |
|---|---|
| 09:00 | 前日の続きから。アルミフレームの組み上げと、搬送機構の取り付け。 |
| 10:00 | 図面で分からない点を設計担当に確認する。変更があれば、その場で工程表に反映する。 |
| 12:00 | 昼休憩。工場二階の休憩室。設計も製造も同じ部屋で昼を取る。 |
| 13:00 | カメラと照明の取り付け、配線。ケーブルの取り回しは保守のことを考えて決める。 |
| 15:00 | 試運転。顧客から預かったサンプルを流し、画像が安定して撮れているかを見る。 |
| 16:30 | 作業記録を残す。気づいた点や、次に注意することを工程表に書き込む。 |
| 17:30 | 退社。立ち上げが近い時期は残ることもあるが、平常時はこの時間に上がる。 |
3人に同じことを
聞きました
入社前に不安だったことと、実際はどうでしたか。
一台ごとに違うと聞いていたので、経験が積み上がらないんじゃないかと。実際は逆でしたね。図面は毎回変わりますけど、気をつける勘どころは共通しています。三台目くらいから、前の案件が効いてくる感じになりました。
休みの日は何をしていますか。
自転車をいじっています。もともと工具を触るのが好きなので、家でも似たようなことを。あとは多摩川沿いを走ることが多いですね。会社が昭島なので、自転車で通える距離に住めているのは大きいです。
どんな人と働きたいですか。
分からないことを、分からないと言える人ですかね。ここは一台ごとに条件が変わるので、経験者でも初めて見る構造が出てきます。知ったふりで進めるほうが、ずっと危ない。聞ける人のほうが、結果的に早く覚えていくと思います。



