「人によって判定が分かれる」
相談を寄せたのは、医療機器に使われる小型の円筒部品を製造する会社だった。直径十数ミリ、長さ数センチ。人の体に入る部品なので、表面の状態には厳しい基準がある。
検査したいのは、表面に生じる浅い線状の傷。大きさの目安は0.3ミリほど。部品は金属光沢が強く、見る角度によって傷が見えたり消えたりする。現在は検査員が照明へかざし、部品を指先で回しながら一つずつ確認していた。二人で見て、判断が割れたものは第三者がもう一度見る。時間も、人も、かかっていた。
「良品と不良品の境界が、人によって少し違う。検査員の負担も大きい。自動化できないだろうか」
サンプルを受け取った宮原が最初に確認したのは、傷の大きさではなく、どの傷を不良とするのかだった。四十個の部品を顧客と一緒に見比べ、良品、不良品、そして判断が分かれるもの、の三つに分けていく。
判断が分かれるものは、全体の一割ほどあった。装置をつくる前に、この一割をどちら側に寄せるのかを決めなければならない。プロジェクトは、機械の話ではなく、基準をそろえる話から始まった。









