Column
試算表を見るとき、
最初に確認したい3つの数字
試算表を受け取っても、勘定科目が並んでいて、どこから見ればよいかわからない。そんなときは、すべての数字を一度に理解しようとせず、粗利益、営業利益、現預金の3つから確認してみましょう。
この3つを見ると、「売上に対して利益は残っているか」「会社を維持する費用を払ったあとに利益があるか」「利益と実際のお金の動きに差がないか」を順番に整理できます。
本記事は架空の税理士事務所サイトの制作デモです。掲載する会社名、人物、数値、コメントはすべて架空です。会計・税務上の判断は個別事情を確認してください。
この記事の要点
- 売上だけでなく、まず粗利益を見る
- 営業利益で、本業全体の採算を確認する
- 現預金で、利益とお金の動きの差を確認する
- 単月だけでなく、前月、計画、前年同月と比べる
- 数字が変わった理由を、現場の出来事とつなげる
試算表は「答え」ではなく、質問を見つける資料
試算表は、一定期間の売上、費用、利益、資産、負債などをまとめた資料です。正確な試算表を作ることは大切ですが、完成した数字を眺めるだけでは、次の判断は決まりません。
たとえば売上が増えていても、外注費や材料費がそれ以上に増えていれば、忙しさほど利益は残りません。利益が出ていても、売掛金の入金前に支払いが集中すれば、預金残高は減ります。
試算表を見る目的は、すべての科目を覚えることではなく、「なぜこの数字が変わったのか」「次に何を確認するか」という質問を見つけることです。
Sample report
今回使う架空の月次レポート
対象:株式会社ノースノート(架空)/Web制作会社/2026年7月
| 指標 | 7月実績 | 比較情報 |
|---|---|---|
| 売上 | 720万円 | 計画比+2.9% |
| 粗利益 | 410万円 | 粗利益率56.9% |
| 営業利益 | 92万円 | 営業利益率12.8% |
| 月末現預金 | 1,180万円 | 6か月予測の最低残高1,040万円 |
1つ目の数字|粗利益
売上が増えたときほど、粗利益を先に確認する。
粗利益は、売上から、その売上をつくるために直接かかった原価を差し引いた利益です。業種によって原価に含めるものは異なりますが、建設業なら材料費や外注費、制作会社なら案件に直接かかる外注費などが該当します。
今回の架空例|粗利益
410万円(売上720万円/粗利益率56.9%)
売上が計画を上回っていても、粗利益率が下がっている場合は注意が必要です。値引きが増えた、外注費が想定より高かった、利益率の低い案件が多かったなど、いくつかの理由が考えられます。
確認したい質問
- 売上が増えた案件は、粗利益も確保できているか
- 見積もり時の原価と実際の原価に差がないか
- 外注費や仕入価格が変わっていないか
- 値引きや追加対応が増えていないか
- 利益率が大きく異なる商品・案件はないか
粗利益の変化を見つけたら、会計上の数字だけで終わらせず、案件や現場の出来事まで戻って確認します。
2つ目の数字|営業利益
会社を維持する費用を払ったあと、いくら残ったか。
営業利益は、粗利益から、人件費、家賃、通信費、広告費など、会社を運営するための費用を差し引いた利益です。本業全体の採算を確認する数字と考えるとわかりやすいでしょう。
今回の架空例|営業利益
92万円(粗利益410万円/営業利益率12.8%)
粗利益が増えていても、採用、外注体制、広告、事務所移転などで固定費が増えれば、営業利益は減ることがあります。大切なのは、費用が増えたこと自体を悪いと決めつけないことです。
将来の売上をつくるために必要な採用や広告であれば、予定どおりの支出か、その効果をいつ確認するかを決めます。予定していない費用が増えた場合は、原因と継続性を確認します。
確認したい質問
- 今月だけ発生した費用と、今後も続く費用はどれか
- 採用や広告など、先行投資として増えた費用はあるか
- 固定費をまかなうために必要な粗利益はいくらか
- 計画した営業利益との差は、どの費用から生じたか
3つ目の数字|現預金
利益が出ていても、同じだけお金が増えるとは限らない。
現預金は、現金と預金の残高です。利益と現預金は同じ動きをしません。売上を計上しても入金前なら預金は増えず、借入金の返済や設備購入では、費用の計上と異なるタイミングでお金が出ていきます。
今回の架空例|現預金
1,180万円(6か月予測の最低残高1,040万円/安全資金ライン900万円)
7月末に1,180万円あっても、その金額だけを見て投資や採用を決めることはできません。翌月以降の納税、給与、外注費、借入返済、設備購入を反映し、最も残高が減る月を確認します。
確認したい質問
- 売掛金はいつ入金されるか
- 大きな支払いと納税はいつあるか
- 借入返済を含めた月末残高はいくらか
- 売上が計画を下回った場合、どこまで耐えられるか
- 会社として残したい安全資金はいくらか
安全資金ラインに唯一の正解はありません。固定費、入金条件、借入、経営者の考え方をもとに、会社ごとに設定します。
3つの数字を、この順番で見る理由
- 粗利益で、商品や案件の採算を見る
- 営業利益で、会社全体の採算を見る
- 現預金で、支払いを含む実際のお金を見る
この順番で見ると、売上が増えたのに利益が残らない理由、利益が出ているのに預金が増えない理由を分けて考えられます。
比較するときの順番
- 前月と比べる
- 計画と比べる
- 前年同月と比べる
- 変化が大きい項目を現場の出来事と結びつける
単月の数字だけで良し悪しを決めると、季節性や一時的な支出を見落とします。比較する基準をそろえ、変化の理由を確認しましょう。
月次面談で確認したい5つの質問
- 売上と粗利益の変化は、どの案件から生まれたか
- 今月増えた費用は、一時的か、今後も続くか
- 3〜6か月以内に大きな入金・支払い・納税はあるか
- 採用や設備投資を行った場合、最低残高はいくらになるか
- 次回面談までに、誰がどの資料を確認するか
月次面談は、税理士が数字を読み上げる時間ではありません。経営者が感じている変化と、試算表に表れた変化を照らし合わせ、次に確認することを決める時間です。
数字がそろわないときに見直すこと
試算表が遅い場合、担当者の作業速度だけが原因とは限りません。請求書の作成、領収書の保存、外注先からの請求、カード明細、売上計上の確認など、複数の場所で情報が止まっていることがあります。
見直す項目
- 資料を保存する場所が複数になっていないか
- 月末に確認する担当者と締切が決まっているか
- 不明な取引をまとめて質問できる状態か
- 売上と入金予定を別々に管理していないか
- 税理士から試算表を受け取る時期が決まっているか
最初から完璧な月次決算を目指す必要はありません。まずは、何が遅れているかを特定し、確認したい数字から順番に整えます。
Summary
試算表を開いたら、
粗利益、営業利益、現預金から。
3つの数字だけで、すべての判断ができるわけではありません。ただ、どこから見ればよいかわからない状態から、次の質問を見つける入口になります。
Check
- 粗利益で、売上をつくるための原価を確認する
- 営業利益で、会社全体の採算を確認する
- 現預金で、利益と実際のお金の差を確認する
- 前月、計画、前年同月と比較する
- 数字の変化を、案件、採用、投資などの出来事とつなげる
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数字の意味より先に、
何を決めたいかをお聞かせください。
採用、設備投資、外注、納税。これから決めたいことに合わせて、見る数字と確認する順番を整理します。
本記事は制作デモです/実際の税務相談は受け付けていません