加工の仕事を知ったとき
機械を動かす前に、考えることがある。
ものを触ったり、仕組みを見たりするのは好きでした。ただ、それが加工の仕事とどうつながるのかは、入る前にはわかっていませんでした。最初は、決められた作業を正確に繰り返す仕事だと思っていたんです。実際は、その作業に入るまでの準備や判断にも、かなり考えることがありました。
図面の形をつくるために、素材をどう固定して、どの順番で加工するか。同じ形でも、進め方には理由がある。入社してすぐはそこまで見えていませんでしたが、先輩の段取りを見ているうちに、「なぜ、この順番なんだろう」が気になるようになりました。それが、自分にとっての入り口でした。
自分で考えるようになったきっかけ
答えを聞く前に、自分の案を一つ持っていく。
先輩に聞くとき、最初は答えを教えてもらおうとしていました。あるとき「自分ならどう進める?」と聞かれて、すぐに何も言えなかった。作業を覚えたつもりでも、その理由はまだわかっていなかったんです。それから、相談する前に、自分の案を一つ考えるようになりました。
案が違っていても、「ここまで考えました」と伝えると、何を見落としているかを一緒に確認できます。逆に、わからないことをそれらしく説明しようとすると、話が遠回りになる。自分がわかっているところと、判断できないところを分けて伝える。それも、段取りを考える力の一部だと思っています。
うまくいかなかった作業から
経験が増えるほど、見直したい思い込みも増える。
前にやった作業と似ているから、同じように進められると思ってしまうことがあります。でも、図面をよく見ると違う部分がある。準備を始めてから気づいて、段取りを考え直したこともありました。経験が増えたからこそ、思い込みには気をつけたいです。
予定より時間がかかった日は、ただ「今日は遅かった」で終わらせないようにしています。準備で迷ったのか、確認に時間がかかったのか。分けて振り返ると、次に変えてみるところが見える。毎回大きな改善ができるわけではないですけど、仕事の進め方を少しずつ良くするのは好きですね。
後輩に教えるようになって
教える側になっても、「どうして?」に立ち止まる。
自分が理解していることを、相手にも伝わる形で説明するのは、別の難しさがあります。「前にも言ったよね」と言いたくなるときは、自分の説明が具体的だったかを考えるようにしています。道具の名前を言うだけでは、初めて使う人にはイメージできないかもしれない。
実物を見せる、図面に戻る、手順を一緒に確認する。相手の様子を見ながら変えています。後輩に「どうしてですか?」と聞かれて、自分も改めて考えることがあります。教える側になったら全部わかっている、ということではないんですよね。仕事を見直す機会を、こっちももらっています。
これから続けたいこと
自分の技術を、誰かの仕事につなげたい。
技術を深めたい気持ちはあります。でも、自分だけがうまくできればいいとは思っていません。次の工程が困らないように、確認したことや気になったことを伝える。自分が知っている工夫を、後輩にも共有する。そういうところまで含めて、加工の仕事を続けていきたいです。
バンドも、自分の音だけ大きくすれば、いい演奏になるわけではありません。仕事も似ている、というと少し格好つけすぎですかね(笑)。でも、相手の状況を見て、自分の動き方を考える感覚はあります。ものづくりが好きな人だけじゃなく、誰かと形にするのが好きな人にも、見てほしい仕事です。